高砂貝塚

高砂貝塚

北海道虻田郡洞爺湖町高砂、噴火湾(内浦湾)沿いの縄文遺跡のひとつが高砂貝塚。南側の入江貝塚とともに世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産17のひとつになった貝塚を伴う集落で、噴火湾(内浦湾)を眺望する標高10mほどの台地上に位置しています。

縄文時代晩期の貴重な貝塚も

高砂貝塚
公園として整備された高砂貝塚/JOMON ARCHIVES

高砂貝塚は縄文時代後半から擦文時代(さつもんじだい=7世紀〜13世紀、北海道と本州地域の交易の活発化を背景に、本州の土師器の影響を受けた擦文式土器を特徴とする文化で、四角い竪穴住居に居住)、さらに近世アイヌ時代(アイヌ時代は本州の鎌倉時代以降の文化です)にかけての遺跡。

昭和25年、伊達高校郷土研究部が発見し、調査が開始されました。

隣接する高砂貝塚とともに噴火湾岸を代表する貝塚を伴う集落跡(高砂貝塚と包括して入江・高砂貝塚として国の史跡に)。
温暖な縄文時代、縄文海進で現在、室蘭本線が走っているあたりが海岸線だったと推測され、水産資源が豊富な噴火湾(内浦湾)に面し、背後には落葉広葉樹の森が茂り、定住に向いていたことは容易に想像できます。
高砂貝塚の貝塚は、縄文時代後期初頭と晩期の中頃の3ヶ所。
噴火湾(内浦湾)沿岸では、縄文時代を通じて数多くの貝塚が形成されていますが、縄文時代晩期につくられた貝塚は、発見例が少ないことから、当時の暮らしを知る上で貴重な貝塚なのです。

貝塚からは、タマキビ、ホタテ、アサリなどの貝類、ニシン、カレイ、マグロなどの魚骨、エゾシカ、イルカなどの哺乳類の骨が出土。
アサリやカレイ(寒流性魚類)が多く出土することから、貝塚周辺には砂浜が発達していたとともに、温暖といわれる縄文時代でも一時的な寒冷化があったことを示しています。

高砂貝塚には、貝塚と墓域がありますが、縄文後期の初めにつくられた貝塚と縄文晩期の墓域とが、ほぼ同じ位置で発見されていることから、貝塚に墓を築くということが、伝統的に引き継がれていたことを示しています。

墓域は、土坑墓と配石遺構で構成され、ベンカラ(紅殻=赤い顔料)が散布された土坑墓からは、土器や石器、石製品などの副葬品が出土(縄文時代晩期には土器や石器などを副葬)。
墓の近くの石を円形に並べた配石遺構のひとつからは、3つの小さな土器と土偶が発掘され、そのうちのひとつには、ベンカラが入れられていました(再生を祈った儀式の痕跡だと推測)。

高砂貝塚から見つかった人骨は、そのほとんどが手足を折り曲げて埋葬される「屈葬」で葬られていますが、抜歯の痕跡が認められる人骨、胎児骨を伴う妊産婦の墓も見つかっています(縄文時代の妊産婦の埋葬例は全国的にも貴重)。
妊産婦の墓は頭を南に向け、ベンガラを多量に散布するという点が他の墓とは異なった特徴です。
新しい命を生み出す妊産婦は大切にされ、その死は、通常の埋葬とは異なった扱いを受けているのだと考えられています。

高砂貝塚は、縄文時代の定住成熟期後半の貝塚を伴う共同墓地で(縄文時代から土器が生まれ、定住が始まっています)、しかも縄文人の高い精神性を知ることができる重要な遺跡のひとつ。

一帯は高砂貝塚公園として見学できるほか、南側の入江貝塚との間にガイダンス施設の「入江高砂貝塚館」が整備されています。

高砂貝塚
縄文時代後期の土坑墓/JOMON ARCHIVES(洞爺湖町教育委員会撮影)
高砂貝塚
縄文時代晩期(2800年前)に作られた土偶/JOMON ARCHIVES(洞爺湖町教育委員会所蔵)
高砂貝塚
名称 高砂貝塚/たかさごかいづか
所在地 北海道虻田郡洞爺湖町高砂町52
関連HP 洞爺湖町公式ホームページ
電車・バスで JR洞爺駅から徒歩10分
ドライブで 道央自動車道虻田洞爺湖ICから約2km
問い合わせ 入江高砂貝塚館 TEL:0142-76-5802
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
入江貝塚

入江貝塚

 北海道虻田郡洞爺湖町、噴火湾(内浦湾)沿いの縄文遺跡のひとつが入江貝塚。北側の高砂貝塚(たかさごかいづか)などとともに世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産17のひとつになった貝塚を伴う集落で、噴火湾(内浦湾)を眺望す

入江高砂貝塚館

入江高砂貝塚館

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高砂貝塚

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