ウニには長い棘をもつ「ムラサキウニ(北海道に棲むのはキタムラサキウニ)」とタワシのような「バフンウニ(正しくはエゾバフンウニ)」の2種類がありますが、浜値が高く珍重されるのはバフンウニ。 知床羅臼で獲れるのはエゾバフンウニです。 ちなみにバフンウニは「ガンゼ」と呼ばれ、ムラサキウニ(Northern sea urchin)は「ノナ」とも呼ばれます。 まず、北海道を旅するなら、この違いを知っておきたいところです。
「たも採り」漁が基本
利尻に行くと、「利尻昆布を食べているから利尻のウニは美味い!」と島の人は自慢します。 たしかに、利尻のウニも美味しいのですが、この理屈でいえば、利尻昆布より浜値が圧倒的に高い羅臼昆布(大阪の料亭で使われる最高級の昆布)を食べている羅臼のウニは、「最高だべさ!」(羅臼の漁師)とあいなる次第。 羅臼のウニ漁は、通常は1月15日〜6月30日が漁期(その年によって始期や終期が変更となる場合があり)。 さらに資源保護のため流氷到来の1月〜4月までと、プランクトン増殖の5月〜6月とで操業場所を変えています。 1月〜4月は、羅臼港から標津町方面の海域。つまり漁師がいう「上」(かみ)の海域。 5月〜6月は、羅臼港から知床半島先端部の海域。つまり漁師がいう「下」(しも)の海域です。 漁法も微妙に異なり、1月〜4月は、「たも採り」漁。 「礒舟」という1t弱の小さい舟で出漁し、昆布漁と同様に「メガネ」で海中を除いて、網がついている棒でウニをすくって採取します。 5月〜6月は、「たも採り」漁も行なわれますが、潜水による漁も始まるのです。
宿で味わえるのは2日後?
ちなみに、出漁の2日後に羅臼漁港の魚市場でセリが行なわれ、店や宿に並びます。 羅臼では、ウニを板にのせた「折ウニ」と「塩水ウニ」で出荷していますが、「折ウニ」の工程は手作業のため当日はもちろんのこと、翌日の出荷も間に合わないからです。 漁師から直接生のウニを仕入れない限り、新鮮なウニを味わうことができないわけです。 「時化の後や雨の日の翌日は海中の濁りで漁ができないから、出漁はせいぜい月に数日」(漁師の菅谷さんの話)。 羅臼昆布を食べ、しかもなかなか漁もできない羅臼のエゾバフンウニ。 「人生が変わる味」なんて豪語する海産物店もあって、目下、注目もうなぎ登りになっています。