「ケンとメリー」といってビビッドに反応するのは、年配の人。日産のスカイラインのCM『ケンとメリーのスカイライン』で、主人公の「ケンとメリー」が全国を旅するシーンが流されましたが、第15作『地図のない旅』に登場する北海道美瑛町の波打つ丘の木が、今も人気の「ケンとメリーの木」です。
一世風靡の「ケンとメリーのスカイライン」キャンペーン

「あのスカイラインが新しくなりました」のCMで登場するのが、日産スカイライン(SKYLINE)4代目のC110型。
先代のC10型の時代に展開された「愛のスカイライン」キャンペーンを継承、さらに発展させた「ケンとメリーのスカイライン」キャンペーンをスタートさせ、旅が日常的になりつつあった若者をCM画面に釘付けにさせるほどの社会現象になったのです。
そのCMソングが、BUZZが歌う『ケンとメリー ~愛と風のように~』。
CMは全16作ですが、注目は15作目の『地図のない旅』編。
昭和51年9月に放送がスタートした『地図のない旅』編で、「ケンとメリー」は北海道の波状丘陵を旅し、丘の上に立つ一本の木が夕日を浴びて美しくきらめきます。
昭和50年に山陽新幹線は博多駅まで延伸し、在来線でもL特急が増発され、旅は便利さが強調されつつありましたが、北海道はまだまだ周遊券を手にした「カニ族」が鉄道と路線バス、そして徒歩で周遊する時代でした。
美瑛の丘の『地図のない旅』、そして丘の上の一本の木。
これは当時の若者にとって強烈な印象として残り、放送直後から美瑛を目ざす人が急増しました。
ポプラの木といわれていますが、正式にはセイヨウハコヤナギ。
丘の上に立つ高さ30m超えの木は、今も美瑛のシンボルとなっています。
なぜ15作『地図のない旅』が注目される!?

このケンメリのCMを手掛けたのは東京・銀座にあるライトパブリシティという広告代理店。
CMに登場する初代ケン&メリーは陣内たけしとダイアン・クレイ、陣内たけしが交通事故で急逝したことで、2代目は前田俊彦とテリー・ミラー(15作『地図のない旅』は2代目のふたり)。
BUZZの『ケンとメリー ~愛と風のように~』はヒットチャートを駆け上がり30万枚を超える大ヒットソングとなったのです。
16作あったCMのなかで、なぜ美瑛だけが注目されたのでしょう。
それは当時国鉄の『ディスカバー・ジャパン』キャンペーンが展開され、アンノン族も登場。
すでに古都、高原などは手垢のついた観光地になってしまっていたのです。
まだまだ北海道は見知らぬ北の大地
そこにはこれまで見たことのない日本離れした雄大な景観があったのです。
周遊券を手にして北海道一周する旅人も、まだまだ富良野でさえ未知なる世界でした。
富田ラベンダーファーム(現・ファーム富田)を世に出した国鉄のカレンダーも昭和51年版(月別で5月のカレンダーにラベンダー畑を掲載)。
偶然にも「ケンとメリーの木」と富田ラベンダーファームは同じ年に、注目されるようになったのです。
これが富良野・美瑛ブームの始まり、火付けといっても過言ではありません。
カーナビに誘導され、BUZZの『ケンとメリー ~愛と風のように~』をBGMに美瑛を訪れても、当時のわくわく、ドキドキ感は得られないのかもしれません。
【昭和レトロの旅】CMで一斉を風靡! 今も人気の「ケンとメリーの木」 | |
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