例年1月下旬から2月下旬に結氷し、不凍湖と結氷する湖の境といわれているのが、摩周湖。流入する水も流れ出す川もない、摩周カルデラのカルデラ湖で、透明度は日本一。1931年に41.6mの透明度を記録し、これは湖沼の透明度の記録上の世界1位。そんな摩周湖も近い将来凍らなくなる可能性も。
近い将来、摩周湖が「最北の不凍湖」の仲間入り!?
北海道には面積が1ha以上の湖沼が100以上あり、そのほとんどが冬期に結氷します。
最北の不凍湖といわれるのが、日本で二番目の深度を誇る支笏湖(しこつこ)で、支笏湖ブルーと呼ばれる青い湖面が特徴的。
洞爺湖(とうやこ)も同様に不凍湖ですが、支笏湖のほうが北にあるので、最北の称号を譲っています。
実は、サロマ湖のような海水の強く入る汽水湖(きすいこ)と温泉性の沼を除き、北海道で不凍湖として知られているのは支笏湖と洞爺湖のふたつのみ。
ギリギリで結氷する摩周湖は、摩周湖ブルーと呼ばれる青い湖面が特徴ですが、貧栄養湖である摩周湖では、植物プランクトンに由来する光吸収が少なく、その結果として「青い湖」を生んでいるのです。
北海道では、摩周湖と白老町にあるカルデラ湖の倶多楽湖(くったらこ)が結氷するかしないかの境界線の湖で、例年、ヤキモキさせながら1月下旬から2月下旬になってようやく凍り始めます。
過去の例でいえば暖冬の2014年、倶多楽湖は凍りましたが摩周湖は凍りませんでした。
1974年冬季〜2024年冬季までの50年間の観測で摩周湖が最も遅く全面結氷したのは2005年の3月2日でしたが、2024年冬期の摩周湖は部分結氷するだけで、全面結氷はしませんでした。
1974年冬季〜2024年冬季の間(51シーズン)、摩周湖が全面結氷したのは28回。
つまり全面結氷する可能性は54.9%ということになります。
科学的なデータでは凍ったほうがプランクトンの量が増えるので、不凍湖の仲間入りしたり、結氷期間が短くなったりすると「青い湖」の青みが薄れるなど、生態系への影響もあるかもしれません。
植物プランクトンの数が増えると透明度が低下し、青い水の色もやや緑色に変化してしまうのです。
摩周湖は湖面標高351m、最大水深212m(平均水深143.9m)と水深が深いこともあって、結氷が遅れ、北見工業大学の研究チームによれば、冬の冷え込みだけでなく、前年の夏の気温の影響を受けることも判明しています。
また、近年、川湯温泉のアメダスなど、摩周湖周辺では2月の月平均気温が上昇しているため、摩周湖が全面結氷する確率は、減少だろうと予測され、地球温暖化の進行は、不凍湖と結氷する湖の境である摩周湖の結氷にも顕著に現れていることがわかります。
北見工業大学の研究チームによれば、全面結氷する湖も、1846年〜1995年では平均すると結氷日は 100 年間で5.8日遅くなり、解氷日は6.5 日早くなっていて、さらに1995 年以降、北半球の湖の結氷期間は加速度的に短くなっているとしています。
国内では全面結氷して氷が持ち上がる「御神渡り」という現象で知られる(北海道でも屈斜路湖で御神渡りが生じます)諏訪湖は、湖畔の八剱神社が室町時代の1397年(応永4年)から結氷日、御神渡 日を記録していましたが、近年では御神渡りが現れることが稀になっています(直近では2018年2月5日に御神渡りが発生)。
摩周湖が「最北の不凍湖」の仲間入りする日も案外早いのかもしれません。
ちなみに弟子屈市街側〜摩周第一展望台の表摩周周遊道路は、冬季も除雪され、湖面を見ることができます(川湯温泉側〜摩周第三展望台〜摩周第一展望台は冬期通行止め)。
「日本で最後に結氷する湖」は、透明度も日本一 | |
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