シリエトクは「地の果て」でない?

知床の語源は先住民族であるアイヌの言葉に由来し、「地の果ての尽きるところ」を意味します。その名のとおり、厳しい自然と人を寄せ付けない地形が、陸域から海域に繋がる、比類ない生態系を育んでいます。ー『知床』の世界自然遺産登録を受けて(北海道知事・高橋はるみ)

上の文章は、知床が世界自然遺産に登録されたときの北海道の報道発表です。ハッキリと知床は「地の果ての尽きるところ」を意味すると、間違った解説をしています。

シリエトクは単なる「突端」!?

アイヌ語地名研究の第一人者である山田秀三さんも シリ・エトクシリ(sir・etok)あるいはシリ・エトコ/sir・etoko)には、「地(の)・突端部」という意味しかないと断言しています。多くのアイヌ語地名の本を読み解いても、「地の果て」と意訳したケースはありません。

実は知床という地名は、礼文島の南端にもあります。まさに島(陸=シリ)の突端(エトク)ですね。礼文のお隣の利尻島のシリも実はこのシリ(sir)で、高い島(ri-sir)というアイヌ語地名です。シリは島だったり、半島だったりするわけですね。

そしてもうひとつ白老町の萩野(はぎの)駅。ここは、明治40年に開設された時には知床信号所と称し、明治42年に知床駅となっています。昭和17年に萩野駅となるまでは、知床駅だったというわけです。
地図をよく見ると駅の北側に突きだした尾根があります。これが陸(シリ)の突端(エトク)ですね。

アイヌの発想を尊重した正しい訳を

こうやって道内各地の類似する地名を分析すると、シリエトクに「大地の果て」とか「地の果てるところ」などというセンチメンタルな意味合いがないことがよくわかります。
ましてや「知床半島は東の果てだから」と安易に考えるのは、先住民族の歴史を否定する危険すらあるのです。

観光的には「大地の果てるところ」、「地の果ての尽きるところ」(北海道知事・高橋はるみ)の方が売れるのかもしれません。
しかし、世界遺産に登録された以上は、先住民族の歴史と文化の見直しを迫るユネスコの考えを尊重し、先人の土地に対するイメージに即した正しい訳が必要だと思えるのです。

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知床(シリエトク)を「地の果て」とするのは間違い!

 

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