ダムの寿命は100年ほどといわれ、戦前に完成した中小のダムは堆砂率が8割を超えるものも。比較的大きなダムのなかで、堆砂率が5位なのが、北海道日高郡新ひだか町を流れる静内川水系春別川に建設された春別ダム。北海道電力が管理を行う発電用ダムで、原始性の高い日高山脈の山中にあります。
日高山中を流れる暴れ川にダムを築いたから、埋まった!?

単に堆砂率だけでいえば、梵字川ダム(山形県鶴岡市)などが上回りますが、梵字川ダムは昭和8年の完成。
築90年オーバーの発電用ダムで、寿命といえなくもありません。
春別ダムは、昭和38年完成で、梵字川ダムに比べれば30歳も若く、築62年でまだまだ現役中の現役。
急峻な日高山脈は、太平洋に近いこともあって、雨量が多く、年平均降水量が2000ミリにも達する多雨地帯。
そこに目を付けた北海道電力が、北海道総合開発の一環として行なったのが日高山中での電源開発(日高電源一貫開発計画)です。
その計画の中で、もっとも険阻な峡谷が、春別川。
日高山脈でも名だたる暴れ川で、春の雪解け水、夏場の洪水と、工事期間中も大いに悩まされた難工事となりました。
ダム周辺は原生林で、ヒグマも出没。
しかも暴れ川という前代未聞ともいえるロケーションでしたが、同時期にさらに春別川の最上流部に奥春別ダム、奥春別発電所を建設する計画もあったため、当初は、ダムが埋まるはずではなかったと推測できます。
自然の猛威に逆らえず、奥春別ダム、奥春別発電所建設は断念。
暴れ川・春別川は、雪解け水、大雨の際に濁流となって造山運動でできた日高山脈の土砂を下流へと運んだのです。
国土交通省の「全国のダムの堆砂状況」(令和6年度)によれば、春別ダムの総貯水容量143万立法メートル中、堆砂量120万立方メートルで、堆砂率は85.7%。
まだまだ若いのにといった状況です。
なお、春別ダムへの道はダートの林道で、通行止めのことも多く、立ち入りはおすすめできません。
堆砂率85.7%、北海道・日高山脈のダムが土砂に埋もれつつある! | |
名称 | 春別ダム/しゅんべつだむ |
所在地 | 北海道日高郡新ひだか町高見 |
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