北海道釧路市の阿寒湖に生育する国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」。東北大学、釧路国際ウェットランドセンター、神戸大学、愛媛大学の研究チームは国際的な学術誌『Environmental DNA』に「120年ほど前までは現在の10~100倍だった」とする研究成果を2025年3月に発表しています。
今後の生息に関しても危惧するべき環境

国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」はアイヌの古老の話などから、チュウルイ湾などを中心に、過去には個数はかなり多かったこともわかっていて、20世紀前半に減少したとされてきましたが、裏付けとなる科学的なデータはありませんでした。
東北大学、釧路国際ウェットランドセンター、神戸大学、愛媛大学の研究チームは、阿寒湖のマリモ(学名: Aegagropila brownii)の過去の生物量を「湖底堆積物に残存するDNA(環境DNA)」と「ミジンコ遺骸」を用いて推定。
その方法は、まず、湖底堆積物に残存するマリモのDNAを用い、過去200年間の生物量の変遷を明らかにし、さらに新たに開発したミジンコの遺骸とDNAを利用して時間経過によるDNAの分解速度を補正する手法で解析したもの。
その結果、1900年初頭のマリモの生物量は現在よりも10~100倍も多かったことが判明したのです。
阿寒湖周辺の森は、前田一歩園が管理し、自然を守ってきましたが、空から眺めてみると湖周囲の森は手つかずの自然が残されているものの、周辺では森林伐採が進んでいることもわかります。
こうした森林伐採による土砂の流入や水力発電の影響による水位変動、さらには湖畔の観光開発に伴う湖の富栄養化が、マリモの生育環境にとっては脅威となっていることが明らかとなったのです。

阿寒湖マリモ、120年で1割に 土砂流入などで減少 | |
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