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【知られざる北海道】vol.17 千歳市で縄文人の生活を知る

今から1万2000年前〜2000年ほど前まで1万年に渡って続いた縄文時代。温暖な時代で、現在の平均海面よりも2m〜5mも海水面の上昇があり、縄文海進といわれています。そんな縄文時代に巨大な集落が築かれたのは、北海道の南部と北東北。どんな集落で、なぜ集落が築かれたのかは、北海道千歳市に行けば、よーくわかります。

日本最大の縄文墓誕生の秘密とは!?

北海道千歳市にあるキウス周堤墓群は、ユネスコの世界遺産(文化遺産)暫定リストへ掲載される「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の構成資産のひとつ。

「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」は、津軽海峡を挟んだ北海道・北東北に位置する17遺跡が構成資産で、今から1万2000年前〜2000年前まで続いた縄文時代の各時期(草創期、早期、前期、中期、後期、晩期)における、人々の生活跡の実態を示す遺跡(集落跡、貝塚、低湿地遺跡)や、祭祀や精神的活動の実態を示す記念物(環状列石、周堤墓)で構成されています。

周堤墓とは円形に掘り上げた土を周囲に環状に積み上げた大規模なドーナツ状の墓。
周堤を含むドーナツ型の直径は18m~75m。

直径75mという巨大な第2号周堤墓をつくる時に積み上げられた土の量は、推定で最大5900立方メートル。
仮に縄文人15人で造成してもまるまる2年を費やす計算となるという巨大な墓で、縄文時代の墓としては日本最大。

そんな巨大な墓はなぜ生まれたのでしょう。
答えは、案外、単純で、「縄文時代には、その生活を維持するために集団生活が必要だったから」(千歳市埋蔵文化財センター)。
その結束を示すのがこの周堤墓群だと推測されています。

縄文時代には、権力を持った首長や、階級社会もありません。
鹿や熊などの狩猟、木の実や山菜などの採取、そして魚や貝、海獣などを捕獲する漁労に支えられた定住生活によって、1万年もの長きに渡って栄えた世界的にも珍しい文化です。
豊かな森と川、そして海という自然があったからこそ成り立った文化なのです。

「そんな社会を維持するためにもっとも大切だったことが、ムラの結束です」(千歳市埋蔵文化財センター)。
キウス周堤墓群も、巨大な墓地を集落総出で造り、埋葬の儀式を行なうことにより、「ムラの一体感」を生み出したと推測できるのです。

世界でも北海道にしかない周堤墓ですが、その8割が北海道で築かれているので、周堤墓はこのキウスあたりで生まれたという仮説も成り立つのです。

すり鉢状に凹んだ巨大な墓

縄文時代の遺跡から出土した男性土偶と土製品

 

千歳市埋蔵文化財センターに展示される動物型土製品

同じ千歳市では、ママチ遺跡第310号土壙墓(どこうぼ=大地に穴を掘っただけの単純な埋葬施設)から出土した「土面」は、国の重要文化財に指定されています。

縄文時代晩期終末(今から2300年前)の写実的な土製の面です(11点の破片を接合)。
頭と耳には直径5mm前後の貫通孔があり、紐を通せば顔に装着することも可能。

彫りが深い点、鼻が直線的で高い点、口が受け口ぎみである点など、縄文人の顔の特徴を表した面で、縄文時代の土製仮面としては最北のもの。

墓に立てられた墓標にこの土面をくくりつけたのだとすれば、埋葬者は結構2枚目の男性だったのかもしれません。

また、千歳市蘭越のナイベツ川付近で見つかった全長14.5cm、厚さ0.9cmの板状の人形(土偶/千歳市指定有形文化財)は、まゆや鼻などの顔の表現がママチの土製仮面とソックリ。
縄文時代の土偶はほとんどが女性をモデルにしているので、男性がモデルの土偶は非常に貴重です。
この男性土偶は千歳市埋蔵文化財センターに展示されています。

全国で約1万8000体といわれる土偶のうち男性の可能性が指摘されているのは岩手県花巻市の石鳩岡遺跡、盛岡市の川目A遺跡、福島県楢葉町の高橋遺跡と数例。

土偶は、子孫繁栄や豊穣(ほうじょう)を祈念して作られたとするのが一般的な解釈ですが、豊猟祈願、玩具、呪物、安産護符、神像、装飾品など多様な意見があり、まだ定説はありません。
縄文人にとって土偶とは何だったのかは、今も謎になっているのです。

新千歳空港建設のために発掘された美々第4遺跡(周提墓)から出土の動物形土製品(国の重要文化財)も千歳市埋蔵文化財センターにレプリカが展示されています。

千歳市を流れる美々川の支流、美沢川沿いにある美々第4遺跡から出土した高さ31.5㎝の土製品の側面は、一見すると鳥にも思えますが、目下のところ、何のデザインなのかは不明。

繩文時代後期・晩期の祭祀、呪術的な儀式に使われたと推測されています。
現在の新千歳空港周辺は、世界的にも稀な標高が低い分水嶺(日本海と太平洋の分水嶺)で、縄文海進の際には、南北から海が迫る海岸に位置していました。
新千歳空港は実は、縄文人が6000年も住み続けた土地の築かれているのです。

狩りのパートナーとしてイヌを飼育などなど、千歳市の縄文遺跡群の新たな発掘から、縄文人の生活も少しずつ明らかになりつつあります。

千歳市で発見された男性土偶

「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の構成資産

「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の構成資産のうち、北海道にあるのは、以下の6ヶ所です。

キウス周堤墓群(千歳市)
北黄金貝塚(伊達市)
入江・高砂貝塚(洞爺湖町)
鷲ノ木遺跡(森町)
大船遺跡(函館市)
垣ノ島遺跡(函館市)

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